夜更けのモンマルトルに、あの黒猫が現れたのは、もう一世紀以上も前のことだという。 ガス灯のまたたく石畳を、しなやかな影がひとつ横切って、それきり通りは静まり返る。 Steinlenの描いた一匹は、酒場の窓硝子の向こうで今もこちらを見つめている。

このささやかな場所も、そんな夜の路地裏のようでありたい。

ここでは、読み終えたばかりの本のひとふし、観たばかりの映画の余韻、 そして、誰に話すでもない日々の覚え書きを、ぽつぽつと残していくつもりだ。 華やかな看板も、けたたましい呼び込みもいらない。 通りすがりの誰かが、ふと足を止めて頁をめくるくらいで、ちょうどいい。

灯りはあえて控えめに。 言葉は、なるべく静かに。

——どうぞ、お入りください。